イタリアには電子レンジに否定的な人が多い。
義祖父母はもちろん、義両親や同世代の知人の実家を訪ねても、電子レンジを見たことはない。
古風なところがある夫もそのうちの一人で、見たくもないと頑なに拒否されるため、今でも我が家には電子レンジはない。
さて、時間に余裕ができた最近はお米を炊いて和食を作ることが多くなった。
和食と言えばもちろん米。
しかし電子レンジなしではご飯を温めることができないため、1人分のお米を毎回炊かなくてはならない。
1度に多く炊きチャーハンにでもすればいいのだが、やっぱり和食のおかずには温かいシンプルなご飯が欲しいのである。
そこで昨日は久しぶりに電子レンジをと相談してみたが、答えは全く変わらなかった。
夫との電子レンジ論争には苦い思い出がある。
まだイタリアに越してきて数か月のころ、電子レンジの便利さを知っている私はどうしても家に欲しくて、電気屋に行ったときに購入を提案してみた。
なぜか私も夫もイライラしていた日だった。
私「これがあればいちいちフライパンで温める必要がないから、便利だよ」
夫「こんなモノを買ってどうする?家に置きたくもない、見たくもない!」
私「日本食、特にごはんには必要なんだけどな…」
話してる途中に私は泣きそうになり、2人とも無言で家に帰った。
直後に友達とアペリティーボへと夫が家を出た瞬間、私はぶわーっと泣いた。
夜まで何度も泣いた。
これが最初にホームシックで泣いた日である。
たかが電子レンジだが、これとホームシックが重なったばかりにとても悲しい記憶になった。
つい先日再び電子レンジの話になった時、このことを夫に初めて話すと申し訳なさそうにしていたが、やっぱり電子レンジは家に置きたくないらしい。
これからも和食を食べるたびに、鍋でご飯を炊く日々になりそうである。
お味噌汁とご飯とおかずを並べられるのは、半年に1度くらいだが幸せである。
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