仕事を始めてから、毎朝メトロで市内まで通うようになった。
社会の一員としてイタリアに溶け込めているような気がしてとてもいい気分なのだが、問題はこのメトロ。
通勤通学ラッシュはローマのメトロも、東京に負けないくらいの超満員になる。
日本人のようにリュックを前でしょわなかったり、中までつめてくれないので空きがあるが、ドア付近は混むため次の列車を待たなければならない時もある。
東京と違うのはチカンと引き換えにスリに気をつけなければならないこと。
そう、盗みや物乞いで生計を立ててるような人たちであるジンガリ(ジプシーのイタリア語)に。
先週ある朝のこと。
この日もメトロは超満員だったが、ドアが閉まる直前に女がふたり駆け込んできた。
瞬時にイタリア人男性が「気をつけろ!カバンに気をつけろ!」と、目の前にいたマダム3人組に叫んだ。
マダムがカバンに目を向けたその時には、すでに駆け込んできた女たちの手がカバンの上にあったが、マダムが女の手を引っ叩き事なきを得た。
この女たちこそがジンガリである。
このイタリア人男性は「毎日メトロを使うから、顔見ればジンガリかどうかわかる。本当に気持ち悪い」と続けて話した。
それを目の前で聞かされても動じずまたスリを続けるであろうジンガリも、次の駅でジンガリを力いっぱい車外に押し出すマダムも、なんだか強いなと感心した。
ジンガリの一人はまだ10代くらいの、白い肌に黒髪の東欧人っぽい感じの女であった。
ちゃんと学校に行って仕事に就かない理由などないように思うが、彼らの独特なコミュニティーがそうはさせないのだろうか?
とにかく人様に迷惑はかけないでいただきたいものである。
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