キャンプ場で会う変な人

夏休みでチレントへ行ってきた。

チレントはローマから車で3時間半、ナポリより南の小さな街である。

高級なレストランやホテルとは縁のない私たちの夏のバカンスはキャンプ一択。

マツの木でいっぱいのキャンプ場に自分たちでテントを張り、小さなキッチンでご飯を作り、夜はランプ1つでトランプをして過ごす。

家と変わらないことなのになにをしても楽しくなるのがキャンプである。

さてキャンプ場では毎回変わった人に遭遇するもので、今回もやっぱりヘンな方がいらっしゃった。

彼ー仮名をルイージとしようーは私たちの滞在5日目にやってきた。

1人で何往復もしながらたくさんの荷物を運び、大きめのテントを張り、入り口にはタープ(テントの屋根だけ)まで用意し立派な家を作っていた。

私たちは昼食中であまり気にしていなかったが、完成したルイージの家を見るとなんとそこにはテレビが。

テ、テレビ…

しかもテレビを置いているその白い箱は…そう家庭用小型冷蔵庫。

冷蔵庫は去年も見たので驚かなかったがテレビには爆笑してしまった。

しかもルイージ、家族連れのお父さんかと思ったがどうやら1人、毎日友達が訪れて来るらしくテレビの前には常にイスが3脚用意されていた。

ここまではよしとしよう、なにをするにも本人の自由である。

しかしルイージは毎日朝8時には起きていて、テレビを音量高めで流す。

しかも朝から晩まで、人がいなくてもテレビは付けられ、なんと流れているのは70年代辺りのドラマ。

ちょっと困るが頻繁に留守にするし挨拶は無視されるので、話そうにも話せないのである。

そんな時ある晩夜遅くに戻ると、私たちのテントに向けてスタジアムかと思うほど大きくまぶしいライトが放たれていた。

テントの中からでも眩しかったので、外から冗談交じりにライト消してくれと言ってみたが反応がなかったので、次の日に話に行くことにした。

ライトが迷惑と言うより、きっと大切なテレビを盗まれることを恐れてライトをつけるルイージを考えると笑いが止まらなくてあまり眠れなかった。

さて次の日の朝。

夫は丁寧に苦情を入れに行った。

ルイージは落ち着きがなくあたふたした様子で「もっと早く言ってくれればよかったのに。ライトの向きを変えるね」と言ったらしい。

「キャンプ場だからセキュリティーは大丈夫。テレビのことは心配せずライトは消してくれ。スタジアムにいたら眠れん」と言う夫のライト消せの要望には応えなかったらしい。

ルイージには宝物のテレビを守るため、盗難防止のスタジアムライトは譲れないだろう。

2日後に私たちはキャンプ場を出たのでもう話すことはなかった。

テレビと冷蔵庫とライトでキャンプ場の光熱費がバカ高くならなかったことを願う。

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