日本の建前と言う文化は世界中の日本オタクの間で有名である。
しかしイタリアにも建前がある。
あまり相手に失礼なことはそのまま言葉にするべきではない、という親切心がイタリア人にはあると私は思う。
さて先日行った魚介のレストランは、失礼ながら過去一番おいしくなかった。
前菜の盛り合わせ(ウェイターのおすすめ)は作り置き冷凍魚介の品々、プリモのパスタは味もなくピリ辛マヨネーズ的なものがかけられ、セコンドの揚げ物も油がベチョベチョ。
滅多に残さない私が半分も食べられず、ハウスワインも間違いなく二日酔いになるようなまずさで、夫も義両親も残念な気持ちになっていた。
そこへウェイターがやってきた。
食事はどうだ?と尋ねられ、「うん…いいよ」と答える私以外の3人。
微妙な反応にウェイターは「正直に言ってよ。みんないいって言うけど本当の意見が聞きたいんだ」と言った。
そこで夫と義父は「うーん…あなたがすすめてくれた前菜はもう少し期待してたよ。まあでもキッシュは美味しかった。揚げ物はおいしいよ」と声をそろえて言った。
ウェイターは前菜について申し訳ないと言い、正直な感想をありがとうと言い去った。
私が残したパスタは、夫が失礼だからともう少し食べた。
揚げ物は全員で完食した。
私だったらもう少し文句を言ってしまいそうなところを、夫と義両親は相手への敬意を忘れずに伝えた。
意見をはっきり述べることが日本と比べたら断然多いが、その中にも暗黙のルールがある。
いつでもどこでもはっきり言っていいというものではない。
日本の常識を受け入れられない外国人が日本では生活しづらいのと同じような空気が、イタリアにも流れている。
オーストラリアでは感じられなかったこの空気は、私が十分なオーストラリア人と接しなかったからか、オーストラリアの歴史が日伊ほど長くなくかつ多民族国家だからかはわかりかねない。
だが日本とイタリアに共通する建前が存在するのは感じるのである。
一部の好き勝手する移民との間を除いては…
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